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2008年7月28日 共同通信

子どもたちと築いた“絆” 太鼓奏者の影山伊作

ブラジル・サンパウロで、六月に開催された日本人移住百周年の記念式典。約千二百人もの日系人の子どもらが和太鼓を披露した。四年あまりにわたって彼らを指導してきたのが、海外でも活躍する影山伊作(かげやま・いさく)ら太鼓集団「天邪鬼(あまのじゃく)」だった。

「みんな自分のためだけでなく、百年前に船で渡ってきた先人や、家族のために打っているのがよく分かった」と話す影山。式典では、滑走路のような約五百五十メートルのサンバスタジアムで列を成して演奏、観衆三万七千人の喝采(かっさい)を浴びた。

天邪鬼の一員で二〇〇四年に現地で公演を行ったのがきっかけ。太鼓を学ぶ子どもから「あなたのようになりたい」と声を掛けられ「お手本になろう」と心を決めた。

基礎から学び始めた子どもたちも、〇六年に日本太鼓連盟が海外初の資格認定試験を行うまでに上達。最初は五十張りほどしかなかった太鼓は、現地で人数分を作った。

情熱を注いだのは、ブラジルで出会った日系人の子どもたちの姿が、自らの幼少時代に重なったから。日系米国人の父と日本人の母を持ち、米サンフランシスコで生まれ四歳で日本へ。「日本人でも米国人でもない。自分は何者なのか」と悩んだという。

そんな影山を変えたのが、太鼓との出会い。「ほかの人にはできない太鼓を演奏できる。優越感がわいて、自分の独自性に満足できるようになった」

ブラジルでの経験を振り返り「子どもたちが成長する姿を見て、太鼓を通じてチームワークや思いやり、礼儀、忍耐を教えることができた」と言う影山。 式典で演奏したオリジナル曲「絆」のタイトルと、日系の人々から教わったことを重ね合わせる。八月の天邪鬼の東京公演をはじめ、今後もこの思い出の作品を大切に演奏していく