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千人太鼓

ブラジルで日本の心を指導

太鼓集団天邪鬼代表、渡辺洋一は(財)日本太鼓連盟の事業の一環として、ブラジル各地(サンパウロ、マリリア、クリチーバ、イビウナジュンジアイ、ロンドリーナ、リベロンプレット等)で2004年から5年間に渡り和太鼓指導を行いました。世界最大の日系社会に生まれ育った400人以上の子供達を中心に、太鼓の歴史や、技術、楽器の取扱法、衣装などの指導をし、国境や言葉の壁を越えたビートで通じあう真の触合いを成し遂げました。
また、(財)日本太鼓連盟「日本太鼓講習会」技術認定資格検定を行ってまいりました。

合同曲「絆」指導レポート

千人太鼓指導

この度の指導者派遣事業で千人太鼓に必要となる半分近くの498人が合同曲を覚えました。小口大八先生の曲に「喧嘩屋台」と「ブラジル太鼓囃子」の要素を取り組む事によって曲に緩急が生まれ、子供たちの曲に対する積極性や覚える意欲が増しました。

幅20メートル、奥行き12メートルの広さに38-39名の演奏者が入るセットを作りました。このセットをひと組とし、25組並べる事によって同時に951名が演奏可能です。千人以上にする場合は、大太鼓を増やす事によって対応できます。また、主催者からの「貴賓席に背を向けない」との要望に対応し、両側に配置されている客席に向かって中心から外へ向って演奏する形にしました。必要となる太鼓の数は一組に付き据置太鼓12貫、斜め太鼓12貫、締太鼓12貫、大太鼓1貫になります。これにメインの組(1組)は鉄管が1つ必要となります。よって、25組で演奏する場合は据置太鼓300貫、斜め太鼓300貫、締太鼓300貫、大太鼓25貫、に加え鉄管が1つ必要になります。

音についてですが、100メートル弱の野外スペース(マリリア)で約200名が同時に演奏したところ、鉄管の生音である程度まとまる事ができました。 モニタースピーカーで鉄管の音と鉄管を演奏する者の声を会場に流すことによって更にひとつの音にまとまるのではないかと思われます。

今回の滞在期間で合同曲を覚えた人をリーダーとし、千人太鼓の成功に対して責任感を持たせ、各自のグループを指導するよう指示をしました。また、曲が迅速に広まるようDVDと新しい譜面を作成し、各グループに配布するよう手配をしました。

資格検定レポート

千人太鼓指導

5級検定を99名、4級検定を58名が受け、途中で帰宅した4級の1名除いて全員合格しました。

これでブラジルにおける5級保持者が284名、4級保持者が122名になりました。ブラジルにおける5級・4級の資格保持者が指導者派遣事業を重ねる度に増えており、着実な成果を生んでいる事が伺えます。

昨年同様、合格を知り泣いて喜ぶ子供が何人もいました。資格認定制度に付加価値が見出され、合格するまでの過程で感動が生まれていた証拠です。

受講生レポート(ニッケイ新聞掲載)

千人太鼓指導

「ヤッター!和太鼓五級検定試験に合格」金子国栄

「コングラッチレイション!」(おめでとう御座います。)と言う渡辺洋一先生の声に第3グループの若者達は飛び上がったり、抱きついたりしてお互いの和太鼓五級検定試験の合格を祝福し合った。ジュンジアイの日伯文化援護協会でのことである。

7月11日、火曜日、ジュンジアイのニッポで和太鼓の講習と五級検定試験があるというので、2人の青年を連れて朝5時、レジストロを出発した。講師は日本太鼓協会、一級指導員の渡辺洋一先生(47歳)だった。渡辺先生は日本の和太鼓集団「天邪鬼」の代表で、一昨年グループを引き連れてブラジル公演に来られた。ブラジルを訪れるのはこれで3回目。

7月8日、アニェンビー大会場で開催された第3回全ブラジル太鼓選手権大会では審査委員長の大役を果された。今回は景山伊作指導員(24歳)も同行し手を取り、足を取り親切に指導した。

午前8時30分、講義が始った。受講生は34人。渡辺先生が日本人の心、太鼓の歴史、太鼓やバチについて、半纏の着け方や帯の締め方、音符、リズム等に関して詳しく説明した後、筆記試験が行われた。昼食が済んで午後の部が開始された。最初に全員が筆記試験合格したことが知らされ全員ホッとする。

先生は雨の音、雪の音、大波、小波の音、雷の音等を実演した後、生世を前に呼んで太鼓を叩かせた。その後五級検定試験の課題曲を全員で一時間程練習した。

34人の受講生を8人か9人の3グループに分け、もう一時間程練習した。各グループには2.3人のリーダーが付き添い熱心に練習が繰返された。3時半頃、実技の試験に移った。

8人のグループは4人が桶胴太鼓を打ち、4人が後ろで締め太鼓を叩いた。

一曲叩き終わったら、前と後ろのメンバーを換えもう一度課題曲を演奏させた。

2回演奏する内、誰か一人でも間違ったら、やり直しをさせた。

各グループが交代で先生の前で演奏するが、1回、2回・・・5回、6回となかなか合格しない。さすがに6回を過ぎる頃は、気落ちしているのが態度に表れている子供もいた。

その度に先生は「笑って!元気だして!」と励ました。もう少しのところで、先生の「だめ!」の声でやり直しとなる。

結局5時30分、7回目か8回目で4グループ全員が合格した。

渡辺先生の「コングラッチレイション」の声に受講生も教えたリーダーも大喜び、涙ぐんでいる子供達も大勢いた。

終わりに、私が先生から通訳を頼まれた若者達に先生の言葉を伝えたのだが、その一言一言が私の心に響いた。先生は言われた。

「皆さん、今日は頑張って厳しい練習に耐え、試験に合格しました。おめでとうございます。もしかしたら泣き出す人も出るのではないかと心配しました。通訳をしてくれている人も一日中皆さんの練習を見守っていたご婦人方もどうなる事かと心配していたのではないかと思います。実は私も心配していたのです。もし今日終らなかったらどうしようかと・・・厳しくした私も心の中ではないていました。何故このように厳しくしたのか。それはブラジルの五級は日本でも通じるからです。何時か皆さんが日本に行った時、恥を克かく様であっては困るのです。今日一番良かったと思うのはリーダーの皆さんが一生懸命教えてくれたことです。教えることは大変難しいということが分かったと思います」

この渡辺先生の言葉をブラジルで初めて五級に挑戦し、合格した若者達は一生忘れることはないだろう。

千人太鼓総評

千人太鼓

今回、最大のテーマであった千人太鼓の見直し、編曲は充分満足できる物に仕上がりました。簑輪氏に「3月に来たときは本当に1000人で演奏出来るのか不安で仕方がなかったが、今回の仕上がりを見て安心しました!リーダーも良く理解していて、これなら自分でも指導出来そうです。ありがとうございました」と言ってもらい「私もそれを聞いて安心です」と答えました。

残る不安があるとすれば、太鼓の出ハケだと思います。しかし、その練習は今年の11月3日に実際に使用するサンバスタンドにて行われる予定だそうです。それが実現出来れば見通しは、ほぼたつでしょう。私に重くのしかかっていたプレッシャーが軽くなりました。

今回、4度目のブラジル入りではありましたが、一番きつい旅程でありました。

しかし、今回も私は余力を残さず全力で、指導が出来たと自負しております。今は、後悔なくすっきりした形で簑輪氏に引き継ぎが出来た事を嬉しく思います。

この5年間に及び、尽力を頂いた全ての関係者にお礼を申し上げます。ありがとうございました。

来年6月の千人太鼓「絆」の演奏が、素晴らしいものになることをただ祈るばかりです。