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2006年7月17日 ニッケイ新聞

ヤッター!和太鼓五級検定試験に合格

「コングラッチレイション!」(おめでとう御座います。)と言う渡辺洋一先生の声に第三グループの若者達は飛び上がったり、抱きついたりしてお互いの和太鼓五級検定試験の合格を祝福し合った。ジュンジアイの日伯文化援護協会でのことである。

七月十一日、火曜日、ジュンジアイのニッポで和太鼓の講習と五級検定試験があるというので、二人の青年を連れて朝五時、レジストロ出発した。講師は日本太鼓協会、一級指導員の渡辺洋一先生(四七歳)だった。渡辺先生は日本の和太鼓集団「天邪鬼」の代表で、一昨年グループを引き連れてブラジル公演に来られた。ブラジルを訪れるのはこれで三回目。

七月八日、アニェンビー大会場で開催された第三回全ブラジル太鼓選手権大会では審査委員長の大役を果された。今回は景山伊作指導員、二四歳も同行し手を取り、足を取り親切に指導した。

午前八時三十分、講義が始った。受講生は三四人。渡辺先生が日本人の心、太鼓の歴史、太鼓やバチについて、半纏の着け方や帯の締め方、音符、リズム等に関して詳しく説明した後、筆記試験が行われた。

昼食が済んで午後の部が開始された。

最初に全員が筆記試験合格したことが知らされ全員ホッとする。

先生は雨の音、雪の音、大波、小波の音、雷の音等を実演した後、生世を前に呼んで太鼓を叩かせた。その後五級検定試験の課題曲を全員で一時間程練習した。

三四人の受講生を八人か九人の四グループに分け、もう一時間程練習した。各グループには二、三人のリーダーが付き添い熱心に練習が繰返された。

三時半頃、実技の試験に移った。

八人のグループは四人が桶胴太鼓を打ち、四人が後ろで締め太鼓を叩いた。

一曲叩き終わったら、前と後ろのメンバーを換えもう一度課題曲を演奏させた。

二回演奏する内、誰か一人でも間違ったら、やり直しをさせた。

各グループが交代で先生の前で演奏するが、一回、二回・・・五回、六回となかなか合格しない。さすがに六回を過ぎる頃は、気落ちしているのが態度に表れている子供もいた。

その度に先生は「笑って!元気だして!」と励ました。もう少しのところで、先生の「だめ!」の声でやり直しとなる。

結局五時三十分、七回目か八回目で四グループ全員が合格した。

渡辺先生の「コングラッチレイション」の声に受講生も教えたリーダーも大喜び、涙ぐんでいる子供達も大勢いた。

終わりに、私が先生から通訳を頼まれた若者達に先生の言葉を伝えたのだが、その一言一言が私の心に響いた。先生は言われた。「皆さん、今日は頑張って厳しい練習に耐え、試験に合格しました。おめでとうございます。もしかしたら泣き出す人も出るのではないかと心配しました。通訳をしてくれている人も一日中皆さんの練習を見守っていたご婦人方もどうなる事かと心配していたのではないかと思います。実は私も心配していたのです。もし今日終らなかったらどうしようかと・・・厳しくした私も心の中ではないていました。何故このように厳しくしたのか。それはブラジルの五級は日本でも通じるからです。何時か皆さんが日本に行った時、恥を克かく様であっては困るのです。今日一番良かったと思うのはリーダーの皆さんが一生懸命教えてくれたことです。教えることは大変難しいということが分かったと思います」この渡辺先生の言葉をブラジルで初めて五級に挑戦し、合格した若者達は一生忘れることはないだろう。