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2004年3月22日 読売新聞

編集手帳

イラン・イラクの国境地帯を舞台に、クルド人の悲劇と希望を描いた映画「わが故郷の歌」が、都内の岩波ホールで上映されている

◇クルド人は、イラク、トルコ、イランなどに分散し、独自の国家を持たない最大の民族と言われる。主人公である三人のミュージシャンが奏でる哀愁を帯びた民族音楽が美しかった。地域の個性豊かな文化にこそ、広く世界に訴える普遍的な力が宿るのだろう

◇文化庁は、世界の人々に様々な文化を伝える「文化交流使」の事業を今年から始めた。落語家の笑福亭鶴笑さん、和太鼓奏者の渡辺洋一さんら十二人が任命され、その活動報告会が、先日、開かれた

◇鶴笑さんは、タイの学校や老人ホーム、スラム街など三十か所を訪ね、片言のタイ語を駆使しながら、人形を使った落語や南京玉すだれなどの芸を熱演したという

◇米国内の和太鼓演奏グループを指導した渡辺さんは、チューインガムをかみながらレッスンを受ける若者たちに、心技一体の精神を説いた

◇最初はピンと来なかった若者たちも、雷、雪、嵐、などを表現する渡辺さんの気迫の太鼓に、圧倒された様子だったという。「真心で接することで、言葉や宗教の壁を乗り越えることができる」と渡辺さんは話す。個性がぶつかり合う交流は、やがて大きな実を結ぶことだろう。