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1991年8月2日 東京新聞 夕刊

ガッツも太鼓判

夏も盛り。各地から祭りや盆踊りの太鼓が聞こえてくる。
男性優位の世界への女性の進出が目覚ましいが、太鼓も例外ではない。
ただし、習い事程度がほとんど。だが、この二人は違う。

数少ないプロ

小川ひろみさんと川名真由美さん。「太鼓集団天邪鬼」のメンバ-である。東京でも珍しい和太鼓演奏のプロ。しかも、厳密に商業芸能活動中の若手女性は彼女たちだけだ。「太鼓なんて盆踊りで打っているだけでプロがいるなんて思ってもみなかった」そんな二人が、和太鼓を習い始めたのは、大妻高校(東京都千代田区)に在学中のことだった。“お嬢様学校”として知られる同校の文化祭では、三年生の有志が、祝い太鼓を演奏する伝統がある。「目立つ先輩がやっていてカッコよかったんですよ。三年生になったら自分たちが、と一念発起。友達と計六人でチ-ムをつくり、自力で先生を見つけて猛練習。学内オ-ディションで見事一位に選ばれ、本番でも大喝采を浴びた。二人は文化祭終了後も、和太鼓から離れられなくなる。「実はこの時ついた先生がプロ和太鼓グル-プ「助六太鼓」の人たちだったんです」曲に合わせて打つ盆踊りと違い「組太鼓」という和太鼓だけのアンサンブル。振りも付け、聴かせる上に見せる演奏だ。このグル-プに、現「天邪鬼」のリ-ダ-、渡辺洋一さんもいた。渡辺さんは、和太鼓に三味線、パ-カッション、キ-ボ-ドなどとも融合させたアンサンブルに取り組みたくて「天邪鬼」を結成。「ガッツを見込んで」小川さんと川名さんも誘った。「ちょうど大妻女子短大の二年生で就職を考えなくてはいけない時期でした。でも、フツ-のOLとは違う、何かをやりたくて」

弱音を吐かず

名に恥じぬアマノジャクな彼女たち。デビュ-までの半年間、スパルタげいこに耐え、青あざが絶えないほどしごかれても弱音を吐かなかった。文化祭仲間のうち、三人はすでに主婦となっているが、二人にとっては太鼓が恋人だという。プロになるまでは短期間だった。けれども時間は問題ではない。きゃしゃな体には見合わない太い腕と力強いバチさばきがそれを証明している。フルパワーで打ち続けたら男でも三分が限度というほど、太鼓演奏は重労働なのだ。彼女たちは、日本全国はもとより、海外でも祭りやイベントに東奔西走している。二日から四日まで「第三回ナゴヤ電飾船パレ-ド」に出演中である。決してお嬢様芸ではない。